泣いて何も撮れなかった日の、いちばん大事な仕事
8年前、七五三の撮影で忘れられない日があります。
主役の女の子は、着物をどうしても嫌がっていました。
袖を通すたびに、表情が固くなっていくのが分かりました。

当時の自分は、
カメラマンとして「どう撮るか」ばかりを考えていました。
光の向き。
立ち位置。
レンズ。
でもその日は、
どんな技術も、その子の気持ちを変えてはくれませんでした。
正直、無力感がありました。
カメラマンとして、技術でしかカバーできない自分が情けなかった。
そんな中で、
パパとママに協力をお願いしました。
「ベテランだからこそ」と言えることを、
ひとつずつ、丁寧に伝えました。
・無理に着せようとしないこと
・その子の目線まで下りること
・「今日はどこまでできそう?」と聞いてみること
撮影は、
カメラマン一人で進めるものじゃない。
そのことを、改めて強く意識した瞬間でした。
結果として、撮影は最後までできました。
完璧な七五三写真ではなかったかもしれません。
でも帰り際、
ご両親からこんな言葉をもらいました。
子どもは大変でしたけど、
家族の大切な時間を、最後まで撮りきってくれて
ありがとうございました。
その言葉を聞いたとき、
胸の奥に、はっきりとした違和感が残りました。
フォトグラファーは、
どうしても「いい写真を残すこと」が先行してしまう。
でも本当に大切なのは、
その時間を、家族とどう過ごすのかじゃないだろうか。
あの日感じた無力感と違和感は、
今もずっと、自分の中に残っています。
それが、
写真より「時間」を大切にしたいと思うようになった理由です。
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